西暦800年から1,000年にかけてのこと。この地方ではシトー派に先行していたベネディクト派の修道士たちによって建立された醸造所です。修道士たちはフォス=セッシュ教会のためにワインを造っていました。フォス=セッシュの名前はフランス語ではなくラテン語の“Fossa Sicca”に由来しています。
フォス=セッシュ城ではフランスで最古となる石造りの発酵槽を見ることが出来ます。
1,000年を越える歴史、それは私たちが良いワインを造っていることを証明はしませんが、このフォス=セッシュと呼ばれるこの土地が素晴らしい好適地ということは証明してくれます。
20年ほど前から、私たちは非常にシンプルな考え方を軸に一連の仕事に反映させています。
フォス=セッシュの所有する土地の3分の1をブドウ造りのために、残りの3分の2は自然と多彩な生態系のために捧げるのです。それは45ヘクタールの単一区画の中心に有機栽培とビオディナミ(ビオディヴァン)の認証を受けた15ヘクタールの畑があるということです。40ヘクタール以上のポテンシャルを持つ畑の中で、15ヘクタールだけをブドウ畑にする、その選択こそが私たちの強い献身なのです。生態系のために確保した30ヘクタールの土地で私たちは20年に渡って生物の多様性を尊重した結果、当初はあまりにも脆弱だった生態系を強化してきました。
この地域は国によるLPO(Ligue de la Protection des Oiseaux)鳥獣保護地区に指定されています。
2018年12月1日、LPOの協力と助言の元、100種以上の野生動物保護シェルターがフォス=セッシュに設置されました。これはLPOがメーヌ=エ=ロワール県で実施したプロジェクトとして過去最大規模のものとなります。
20年前、私たちはこの地域の生態系に不可欠な池を掘りました。2010年には、メーヌ=エ=ロワール県に生息する17種類の両生類を保護する団体が設立されました。そこで私たちは、両生類や特定の昆虫の繁殖を促進するために、水域の脇に湿地帯をつくりました。
私たちは15年以上に渡って受粉を媒介する昆虫のための貯蔵庫を造り、30種類以上の花を5~7の区画に分けて育てています。この植物のための区画は当初は2.7ヘクタールから始まり最大時には5.5ヘクタールにもなりました。今ではこれらの植物、花畑の面積は4ヘクタール程度です。
フォス=セッシュの畑は2つの森に囲まれています。この森はずっと続いていますが全てが私たちの所有地ではありません。私たちが所有する林の面積はおよそ4.5ヘクタールとなります。
過去5年間、私たちの敷地の中の3つの区画でおよそ3,000本の樹が植樹されました。その面積はおよそ20ヘクタールに及びます。これらの植樹の目的はブドウ畑に涼しい風を送りリフレッシュさせ、気候変動の影響を軽減させることです。
私たちはまた、受粉を媒介する昆虫たちがこの気候変動に対応して蜜と花粉を生産出来るように体系化します。それは1月1日から12月31日まで毎日の作業です。私たちの敷地内の昆虫の豊富さと多様性こそが鳥やコウモリにとっての重要な食糧源となっているのです。
2019年4月1日から6月29日までの3カ月、昼夜にかけて動物学者がこの敷地に滞在して動植物の目録を作成しました。完璧な目録を作成するために3カ月という期間は十分ではありませんでしたが、それでもこれらの種を保護するための作業の基盤を得ることが出来ました。60種の鳥類と116種の昆虫類が確認出来たのです。
2015年12月、パリでの国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)を受けて、2016年10月、フランス政府は預金供託金庫 (Caisse des Dépôts et Consignations)を通じてCDC BiodiversityによるNature2050プロジェクトを立ち上げました。これはCOP21の最初の目標に同意しています。
CDC Biodiversityの目標は差し迫る気候変動に対して、農業環境における生物の多様性を改善することです。
このようなプログラムが大きな予算と35年以上の長期的なビジョンを持って立ち上がったのはフランスでも初めてのことでした。フォス=セッシュは即座にこのプログラムに取り組み、当初からNature2050プログラムのパートナーとなっています。
2017年、フォス=セッシュはCDC 2050のカテゴリーで最も厳しい“Arbre d‘Avenir”の全国コンクールで優勝。続く2018年にはメーヌ=エ=ロワール県の農業部門で最優秀賞を受賞しました。同部門でワインのドメーヌがこの賞を受賞したのはこれが初めてのことでした。審査員の注目を集めたのは、フォス=セッシュが複数の雇用創出による改善、経済発展とドメーヌの生態系の多様性保全への全面的な関与を両立させていることでした。
2019年5月からはGPSポイントで特定した土壌と木の葉のサンプルを採取して有機炭素と窒素15のレベルを特定しています。ワインのドメーヌがこのような調査を行うことは世界でも例がありません。目標は気候変動による影響を測定して、私たちの仕事に適応させ取り組んでいくことなのです。2020年9月からは、ドメーヌは100%再生可能な水力発電を使用しています。フォス=セッシュは、気候変動がもたらす結果を予測するために努力を続けています。そのためのアイディアは尽きませんが、既に達成されたことのみをお伝えしたいので、これ以上のことは申し上げません。
1996年、双子の兄弟ギヨームとエイドリアン、母親のフランソワーズ、そして義父のウェリはマダガスカルのブドウ畑を後にしました。1998年、フランソワーズ、ウェリ、ギヨームはフォス=セッシュに移り住み、2010年にはエイドリアンも加わりました。
ギヨーム:マダガスカルで育ち、ブドウ栽培と醸造を学ぶためにスイスを選びました。卒業後、フランソワーズ、ウェリ、エイドリアンと一緒にフランス中をまわり、定住出来る畑を探し求めました。フォス=セッシュに到着した瞬間、彼らは恋に落ちたのです。ワインと自然の真の愛好家である彼は、ドメーヌのワインの醸造とマーケティングを担当しています。
エイドリアン:ギヨームの双子の弟である彼もまた幼少期から10代をマダガスカルで過ごしました。1996年に母国ベルギーに移住。農学部を卒業後、園芸農業センターで技術アドバイザーとプロジェクトマネージャーを、Namur(ナミュール)の農業自然資源・環境総局でマネージャーを務めました。2010年、彼はフォス=セッシュに移住することを決意しました。エイドリアンは畑の管理、会計を担当しています。
セシル:ベルギー出身のセシルは幼少期をNamur(ナミュール)とCharleroy(シャルルロワ)で過ごしました。美術史と考古学を学んだあと、ブリュッセルのベルギーフランス共同体文化遺産局に勤務。2010年に母国を離れ、エイドリアンと共に情熱を分かち合うために渡仏しました。自然を尊重し、土地と触れ合うことの重要性に常に敏感で、現在はフォス=セッシュのブドウ畑の世話をしており、ギヨームと共にワイン造りの全工程に参加しています。
ジュリー:フランス系チェコ人として生まれたジュリーは、幼少期をマダガスカルやその他多くの国で過ごしました。英語とスペイン語を学んだあと、パリでコミュニケーションを学びます。2010年にソミュール地方に移り住み、ギヨームの元で働きます。2012年には正式にフォス=セッシュで働き始めます。ジュリーはドメーヌの管理、コミュニケーションを担当しています。
2012年5月、ギヨームとエイドリアンは一緒にシャトー・ド・フォス=セッシュを継承しました。
現在、2組の夫婦は家族的な雰囲気の中で働き、生活しており、ワインと自然への情熱を分かりあうという共通の目標を持って互いに補完しています。
通常の樽とは別に、フォス=セッシュのセラーでひときわ目を引くのは、この印象的な卵型タンクの列です。この独特な形状のタンクは、古代に発見された巨大なテラコッタの甕やアンフォラ、“ドリア“にヒントを得たもので、半分地中に埋めた状態でワインや油、穀物を貯蔵するために使われていました。この“卵”はメーヌ=エ=ロワール県のエキュイスにあるノンブロ社によって、“黄金比率”に基づいて設計されています。
このタンクは合成物や金属製の補強材は一切使用せず、水硬性石灰と粘土質の砂で構成され、塩素を避けるために湧き水で湿らせた粘土質のコンクリートで作られています。この天然コンクリートは多孔質で、樽の中と同じようにワインに微量な酸素供給を可能にするが、樽香はなく、果実味を保つことがで出来るのです。またステンレスタンクとは異なり、コンクリートは熱伝導は完全にシャットアウトします。この卵型タンクは一体成型されているため、内側に粗い部分がありません。その角のない形状が液体のブラウン運動を促しているのです。
このアンフォラはワインにどのような影響を与えるのでしょうか?フルーティなアロマが増し、口当たりがより豊かになり、樽香のようなインパクトがなくなる。澱がワインを酸化から守るので、硫黄の量を抑えることが出来ます。要するに、これらのタンクによって、介入をできるだけ少なくすることで、純粋さと正確さの点でさらに前進することができるのです。
ドメーヌのセラーには11基のアンフォラがあります。それぞれ空の状態で3トンあり、16ヘクトリットルの容量があります。
Arcane Vin de France Blanc
ヴィンテージ:【2022】
ブドウ品種:シュナン100% 平均樹齢:25年。
畑・土壌:ジュラ紀の地層、火打石の小石と砂利が混ざった粘土質。
非常に根が深い。
気候:海洋性の影響を受けた温帯性気候、ブドウがゆっくりと成熟します。
栽培:ビオディナミ、Ecocert認証、Biodyvin認証
醸造:熟成:ステンレスタンク発酵、熟成。
Panthalassa Vin de France Rouge
ヴィンテージ:【2021】
“Panthalassa”(パンサラッサ)をは、古生代末期に存在した超大陸パンゲアを取り囲んでいた広大な地球規模の海洋です。
ブドウ品種:シュナン100% 選定を少しずつ変えることで葡萄の成長サイクルも段階的に変え、ヴェレゾン後の8月、ブドウの日焼けや過度の暑さを出来るだけ避けるようにしています。
2020年10月は貴腐菌の影響を受けました。これらの葡萄はもはや黄金色というよりは古いピンク色からチョコレート色まで様々な色調をしていました。
これは偉大な熟成ワインを造るためのブドウとしては異例な成熟度です。
果汁は16ヘクトリットルのコンクリートエッグタンクで発酵、熟成されました。
2021年11月瓶詰め。2022年春から飲み頃を迎えますが年々向上していき50年熟成させることが出来れば真の甘露となることでしょう。
Eolithe Vin de France Rouge
ヴィンテージ:【2020】【2022】
ブドウ品種:カベルネフラン99%、カベルネ・ソーヴィニョン1%
平均樹齢:10~60年、樹勢が強すぎない台木。
畑・土壌:ジュラ紀の地層、火打石の小石と砂利が混ざった粘土質。
非常に根が深い。
気候:海洋性の影響を受けた温帯性気候、ブドウがゆっくりと成熟します。
栽培:ビオディナミ、Ecocert認証、Biodyvin認証
醸造:熟成:3~15日間かけて発酵。12か月間タンク熟成。
20~30年熟成するポテンシャル。