レポート『Domaine Michel Gros 』

今年も幕張で開催されたフーデックス2011に合わせて弊社取り扱い
ワイン生産者が多数来日いたしました。
生産者より伺った話をまとめまして、順次ご案内させていただいております。

Michel Gros

Michel Gros

今回は、ヴォーヌ・ロマネを代表する生産者であり、グロ家の長男として知名
度も高いミシェル・グロ氏。比較的多く来日しているので、会ったことがある
人もいらっしゃることと思います。

毎年、このフーデックスの時期に合わせてバレル・サンプルを瓶詰めしてくれ
今年は、最新の2009年ヴィンテージを一通り試飲させてもらいました。

前評判の非常に高いヴィンテージですが、バレルサンプルの段階で明らかに
果実味が前面に出てきており、中間から余韻にかけて熟した甘味がしっかりと
残ります。同じく偉大な年と評価された2005年と比較すると、構造が緩く感じ
てしまうほどあまりにも早くから美味しく快楽主義的な味わいです。

『2009年は9の付くヴィンテージのジンクス通り、素晴らしい年になりました。
天候に恵まれ、非常に成熟した葡萄が収穫できました。
収穫が最も遅いオート・コート・ド・ニュイですら9月15日に収穫しました。
現時点で既にバランスが良く、果実味が豊かです。
また、酸味が低く感じるかもしれませんが、私は長期熟成にも耐えられると
思っています。スタイルとしては1989年に似ているでしょう。』

『2009年はグロ家の看板ワインであるヴォーヌ・ロマネ1級クロ・デ・レアに
とってこの畑をグロ家が入手して150周年となる記念すべき年となります。
そのため、このクロ・デ・レアの2009年のみ1860年当時のドメーヌ・グロ=ゲノ
ーの復刻ラベルとなる予定です。』

Clos des Reas/Gros-Guenaud 

Clos des Reas/Gros-Guenaud 

2009年のClos des Reas は、これを元にしたラベルになる予定。

前評判の高い2009年に対して2008年の下馬評は芳しくはない。
そこで昨年試飲した2008年ヴィンテージについて改めてミシェル氏に意見を
聞いてみました。

『2008年は、葡萄を栽培するという意味では決して簡単な年ではありません
でした。非常にリンゴ酸が多く、マロラクティック発酵に時間を要した年で
したが、骨格の非常にしっかりとしたワインとなりました。
私が思うに、温暖化の影響が少ない50年前のブルゴーニュでワインを造った
ような年です。決して始めから開放的な味わいではなく、やや閉じ気味で、
酸味とタンニンが前に感じられます。
しかし、この要素は早い段階、長くても5~6年で変化していきます。

酸味は和らぎ、タンニンが細かくなってピュアな味わいに変化して私たちに
喜びを与えてくれるでしょう。2001年や2004年のような繊細なヴィンテージ
ですが私は2008年の方が液体のピュアな点が上だと思います。
2008年はまさに、古い時代のブルゴーニュの味わい、ブルゴーニュの本質的
な味わいを教えてくれるでしょう。』

各アペラシオンについての詳細はホームページ(日本語版もあり)に掲載さ
れているので、ミシェル氏からの簡単なコメントだけ案内させていただきます。

Hautes Cotes de Nuits
ヴォーヌ・ロマネ村から約6キロ西に離れた区画で、コート・ドールと比べると
標高が約100メートル高い。そのため葡萄の成熟が遅く収穫はコート・ドールよ
り1週間ほど遅くなります。
マルヌ・ド・ペルナンと呼ばれる泥灰土土壌で、コルトンに見られる地層です。
ピノ・ノワールはコルドン・ピラテラルという風通しの良い剪定。

Chambolle Musigny
4区画の葡萄から造られていますが、特級畑ミュジニーに隣接した区画レ・ザル
ジリエールの葡萄が3分の2を占めています。そのため一般的な村名シャンボール
・ミュジニーと比べると力強さがあり、余韻が長いです。

Nuits St Georges Les Chaliots
私たちの村名ニュイ・サン・ジョルジュはヴォーヌ・ロマネ側の区画の葡萄です
が、このワインはニュイ・サン・ジョルジュ村の中心地の区画になります。
ロワールに見られるシレックス(火打石)とは少し異なる赤いシレックス土壌で、
シャリオの語源となったシャイユ(小石)が多い土壌です。
この区画だけは特異なテロワールを持っているため単独で仕込んでいます。
熟成するとキメの細かい表情に変わり、熟成による変化が面白いワインです。

Nuits St Georges 1er Cru
ヴォーヌ・ロマネ側に位置する二つの区画、レ・ヴィニュロンドとレ・ミュルジェ
から成っています。どちらも標高は同じくらいでニュイ・サン・ジョルジュです
がヴォーヌ・ロマネ的な個性も持ち合わせたワインです。
非常に力強く、構造のしっかりとしたワインになります。

Vosne Romanee 1er Cru Aux Brulees
グロ家が所有している特級畑リシュブールに隣接している区画です。そのため土壌
もワインの性格もリシュブールに似ているのですが、リシュブールの表土が50セン
チなのに対してブリュレはより表土は浅く30センチとなります。
そのためより、軽やかでミネラルを感じさせるワインになります。

Vosne Romanee 1er Cru Clos des Reas
グロ家のモノポール(単独所有畑)となるワインです。
ヴォーヌ・ロマネの斜面下部ですが表土が浅く、若いうちから非常にバランスの良い
ワインです。しかも長期熟成にも耐えることが出来るワインとなります。

Clos Vougeot Grand Cru Grand Maupertui
広大な特級畑クロ・ヴージョの中でも斜面の最上部にあるリュー・ディー、グラン
・モーペルテュイに位置しています。グラン・エシェゾーの丁度真下となります。
クロ・ヴージョはあまりにも広く、テロワールも多彩ですが、この区画は日照が良
く、タンニンが優しいワインが生まれます。

ミシェル氏は各畑の個性について、地図を用いて非常に分かりやすく説明をして
くれました。最後に、これだけ歴史のあるグロ家の葡萄の樹齢はどのくらいなの
か尋ねてみました。

『樹齢はすべての畑で定期的に植えかえを行っています。
ほぼすべての畑において、樹齢は60年、40年、20年、10年の4段階に分かれています。
樹齢が高い葡萄がすべて良いとは私は考えていないのです。あまり樹齢の高い葡萄
だけになってしまうと収穫にも偏りが出てきてしまいます。私たちにも、葡萄畑に
もサイクル、循環が大事なのです。自分の子供、孫の代のことを考えて樹齢が偏ら
ないようにしているのです。』

樹齢が高い葡萄イコール高品質なワインというステレオタイプの図式ではなく、
子供、孫の世代を見据えた畑仕事。脈々と受け継がれてゆくグロ家の歴史と未来を
慮るミシェル氏の人柄がそこに感じられました。

株式会社オルヴォー 村岡 覚