レポートClos Marguerite

いつもお世話になっております。
株式会社オルヴォーの村岡です。

今回は、先日来日いたしました弊社取り扱いニュージーランドワイン
クロ・マルグリットのマルグリット女史来日レポートをお送りいたします。

image0011












日本市場においても、価格と品質のバランスの良さで頭角を現した感の
あるニュージーランドワイン。

クロ・マルグリットはベルギー人夫婦である。

ボルドーのいくつかのシャトーで研鑽を積み、手腕を発揮したジャン=シャ
ルルとベルギーのネゴシアンの娘であるマルグリットが選んだのはマール
ボロの地でした。

海を渡りマールボロの地を選んだ理由はどこにあったのでしょうか。

marborough MAP











『やはりこの冷涼な気候は大きな理由です。
私たちが好きなヨーロッパのスタイルを造るのには理想的な乾燥して
日照に恵まれた気候とテロワールがありました。』

年間降水量600mmというのはフランスのアルザスなどと同じぐらいですね。


『600mmというのはあくまでもマールボロ地区の平均降水量です。
私たちの畑があるアワテレ・ヴァレ―はマールボロの中でも南部の海側
に位置しています。
平均降水量はマールボロの中心にあるワイラウよりも少ないんですよ。』

マールボロの多くのワイナリーは中心に位置するワイラウ・ヴァレ―に畑を
持ち、海側、山側などの畑の葡萄をブレンドしています。

マールボロといえばワイラウが一般的で、ワイン産地の地図や、ワールドア
トラスにもアワテレ・ヴァレ―は載っていませんでした。

la-riviere-en-amont













『ニュージーランド全体もそうですが、アワテレ・ヴァレ―は非常に新しい
エリアです。アワテレ川の地層を見るとわかるのですが、泥土質の表土
の下は小石が多く堆積しており、下層に石が現れる土壌です。この泥土
の構造はボルドーのサン=テミリオンのモラッセと呼ばれる土壌にも似て
います。』

ニュージーランドでボルドーに似た土壌というのは興味深いですね。
では、メルローなどのボルドー品種を植えてみようとは思わなかったのですか?

『気候が全く違います。土壌だけではなく気候も含めての条件ですから。
それにクロ・マルグリットは基本的に私達二人だけの小さなワイナリーです。
葡萄を増やす余裕なんてありません。』

近年のマールボロは新しいワイナリーも非常に増えて、ワイラウを中心に、
いくつかの畑の葡萄をブレンドすることによって、画一的な“マールボロ・スタ
イル”を目指しているように思います。

それに対し、クロ・マルグリットはアワテレ・ヴァレ―の単一畑から造られる、
個性を主張したワインを目指しているように思いました。


印象的なデザインのエチケットについても教えてください。
ラベル画像










『このデザインはアールデコ調で描かれています。
私達のワインの目指す、旧世界と新世界の調和をアールデコ(古い
ものと新しいものの融合)で描いています。また、このバランスを保っ
たポーズにも意味を込めています。三点のバランスを意味していて、
力強さとエレガンス、そしてピュアさのバランスです。』




フランス的な栽培方法として密植や収量制限などをしているクロ・マルグリット。
出来うる限り、自分たちの手ですべての作業をしたいと言う。


『私達の畑は全体で約8ヘクタール程度しかありません。もちろん、収穫
は人に手伝ってもらわないといけませんが全て手摘みです。
例えば芽かきや剪定といった葡萄樹にとって大事な作業は私達だけで
やっています。手伝いを呼んだこともあるんだけど、(剪定時の写真を見せ
ながら)この写真が良い剪定で、この写真の剪定が悪い剪定、この違いが
わかる人には剪定を手伝ってもらいたいんだけど。』



畑の写真を見ると、ピノ・ノワールの区画がソーヴィニヨン・ブランの区画に
挟まれていますね。


『まず、土壌が異なります。ソーヴィニヨン・ブランの区画は表土が薄いです
が、ピノ・ノワールの区画は表土の粘土がより厚くなっています。また、ピノ
・ノワールは樹勢が強くなく、病害にも弱い葡萄です。
アワテレは海岸に近いため、風も強いので、ソーヴィニヨン・ブランの樹で
ピノ・ノワールを護っているようになるこの畑はとても好都合なのです。』

vendange2005_10










最近はサステーナブルやオーガニックを意識したワインがニュージーランドでも
増えています。


『もちろん私達も化学肥料は使いません。
病害対策のためのボルドー液は使いますが…。
アワテレは乾燥していて恵まれた気候なので病害に対してよりも自然の
方が驚異です。例えば鳥害もそうですし、霜害もそうです。オーガニック
やヴィーガンなどの考え方は共感しますが、マーケティング主導になって
しまうことに疑問も感じています。』

ニュージーランドを世界的なワイン産地として牽引したのは間違いなくマー
ルボロ地区のソーヴィニヨン・ブランです。ボルドー出身のジャン=シャルル
が造るということは、ボルドー・スタイルのソーヴィニヨン・ブランを意識して
いるのでしょうか?



『確かにジャン=シャルルはボルドーで醸造や地質を学びました。でも造る
ワインまでは同じにはなりません。
ボルドーのようにバリックを効かせたスタイルはマールボロのワインには相
応しくないと思います。私達はどちらかというとフランスでもロワール、サン
セールのスタイルに近いと思います。』




マイクロワイナリーだからこそ、カリフォルニアなどのワイナリーのように、
高価格のスペシャルキュヴェを造ったりすることは考えたりしないのですか?


『私達は夫婦二人の身の丈にあったワイン造りをしていきたいと思っています。
スペシャルというのなら、2ヘクタールしかないこのピノ・ノワールが私達のスペ
シャル・キュヴェのようなものですね。』






来日中、慣れない日本の東京都内を連れまわされ、疲れているのだろうが、
そんな表情はおくびにも出さず、同行の私達に都度、ワインの解説をしてくれ
たりと非常に気遣いの細かい謙虚な方でした。

“クロ・マルグリット”とはフランス語で“マルグリットの畑”を意味します。
夫婦二人の名前ではなくて夫人であるマルグリット女史の名前を冠している
のですね、と彼女に指摘したら、

『私は嫌だと言ったんだけど、ジャン=シャルルが…』と顔を赤らめていました。