お客様各位
いつもお世話になっております。
株式会社オルヴォーの村岡です。
今回は、先日来日いたしました弊社取り扱いニュージーランドワイン
クロ・マルグリットを手掛けるジャン=シャルルとマルグリットの夫妻
来日レポートをお送りいたします。
前回来日時のレポートも併せてご参考いただければ幸いです。
http://www.orveaux.co.jp/blog/2011/11/02/2441
マルグリット女史は三度目の来日。
畑仕事に日々、忙しいジャン=シャルルは初めての来日となります。
ベルギー出身の夫婦二人が、異国ニュージーランドでワインを造る出発地点はどの
ようなものだったのでしょうか。
『小さい頃から食卓には常にワインがありました。
両親はとりわけ、ブルゴーニュのワインを好んでいたように思います。
それが私の原風景かもしれません。
何かを自分で表現したい、造り出したい、そんな気持ちが私の場合、ワインでした。
22歳の時に、ボルドー大学に入学し、醸造学を学んでから、いくつかのシャトーで
醸造の経験を積みました。』
ボルドーで研鑽を積んだのであればなおさら、なぜ、ニュージーランドを選んだの
でしょうか?
『20歳の頃、世界中を旅して周った時に見たニュージーランドの景色があります。
あとは、土地の個性と可能性を感じました。
私たちは、1996年にニュージーランドに移住して、いくつかのワイナリーで働きま
した。当時はクラウディ・ベイのような大きなワイナリーだけでなく私たちのよう
な小さなワイナリーが立ち上がり始めた黎明期でした。』
『私たちが選んだのはマールボロの中でも海岸寄りのサブ・リージョンである
アワテレ・ヴァレーです。
砂利・小石混じりの表土の下に粘土の層が重なる古い地層は
ボルドーのサン・テミリオンでモラッセと呼ばれる堆積岩とも酷似していました。
葡萄の生育が制限される反面、品質の高い葡萄を生み出すのです。』
左:マルグリット・デュボワ女史
右:ジャン=シャルル・ヴァン・ホーヴ氏
クロ・マルグリットのワインはソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの2種類です。
今回も多くのお客様に聞かれたのですが、
ボルドーで学んでいた経験を生かしてカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを植えよう
とは思わなかったのでしょうか?
『簡単に言うと、気候が冷涼過ぎるのです。
10年ぐらいワインを造っていれば、もしかしたら1年ぐらいはカベルネでも熟した葡萄
が取れるかもしれません。
しかし、ピノ・ノワールであれば毎年、素晴らしい葡萄を得ることが出来ます。』
以前、マールボロのソーヴィニヨン・ブランだけを集めてブラインド・テスティングし
たことがありました。
その時感じたのは、香り、果実味、酸味ともに際立っていたのが印象的でした。
『基本的に私たちは二人だけのワイン造りです。二人だけで抱えられないことまでしよ
うとは思いません。収穫以外は基本的に二人だけで丁寧に造ることを心がけています。
大量生産型のワインというよりはオートクチュールのワインだと思っています。
まず、葡萄樹の密植は多くのワイナリーの倍近い密植度です。ソーヴィニヨン・ブラン
でヘクタールあたり3,000本ピノ・ノワールで4,000本です。また、収穫量も厳しく制限
しています。
多くのワイナリーでは枝を4本伸ばす仕立て方ですが、私たちは1本の樹から2本の枝だけを
伸ばすダブル・グイヨで仕立てています。量を取ることが目的ではないのです。その結果、
非常に凝縮度の高い葡萄が得られていると思っています。
私たちのピノ・ノワールには、他のワインにはあまり見受けられない森林やマッシュルーム
を思わせる第2アロマがあります。これは密植に由来するアロマと私たちは考えています。』
印象的なラベルには、旧世界と新世界の融合を意味するアール・デコ調で、バランスを取っ
た女性が描かれています。
彼の話の中には“バランス”という言葉が繰り返し登場します。
『その通りです。そしてよく見ると葡萄の樹にも似ているでしょう。ダブル・グイヨの葡萄
にもなぞらえているのです。このデザインは妻のマルグリットが考えたのですよ。』
今回は、三日間、マルグリット夫妻と行動を共にしました。
日本のワインを取り巻く環境の進化、温度管理の徹底ぶりなどに非常に驚いていました。
“オーガニック”が流行している日本のワインシーンを見ながらも、ジャン=シャルル氏は
ワイナリーでのオーガニック栽培を喧伝していません。
『当然、化学肥料は使いません。私たちにとってそれは当たり前のことなのです。だから
ラベルにも必要なこと以外は表記しないのです。私たちはオーガニックでの栽培アプローチ
をしてはいますが、それを売り文句にしようとは思いません。』
*人口よりも多いと言われる羊たちは、畑の雑草を食べたりと、畑の生態系の一環を担って
います。
恥ずかしながら自分も、今回初めて知ったのですが、彼らのワインに添加される瓶詰め前の
SO2の量は驚くほど低いものでした。
『ソーヴィニヨン・ブランで25~28ppm、ピノ・ノワールで22~25ppm程度です。
スクリューキャップということで、気密性が高いということもあり、CO2の充填とごくわず
かな量のSO2でワインを護っています。だからといって熟成しないとは思いません。
個人的にはピノ・ノワールで6~8年ぐらいの熟成での向上は見込めるでしょう。
10年以上はまだやったことがないからわからないけどね。』
(ピノ・ノワールの初ヴィンテージは2005年)
ヨーロッパを周遊した後、日本に直行しての仕事で、疲れが溜まっていたにも関わらず、
丁寧に説明をしてくれる二人。以前、来日した際に、クロ・マルグリット(マルグリットの畑)
という名前に少し顔を赤らめていたマルグリットさんが印象的でした。
『(マルグリット女史)私は2カ月ぐらい、違う名前がいいと抵抗したのですが…』
ジャン=シャルルもボルドー大学時代、当時としては珍しかった日本人と同級生だったことも
あり、日本のワイン造りにも大変興味を示していました。また、マルグリット女史の甥が日本
人と結婚したこともあり、日本にはとても好意を抱いてくれていました。
前回、来日した際には、日本食のレシピ本を買い込んだというマルグリットさん。
食事をしながら、ワイン造りを始める前の昔話などを聞いていました。
『ジャン=シャルルが一念発起してボルドー大学に通っていた頃、私たちはもう結婚してい
ました。学業に専念してもらうために、私は働いて家庭を支えていたんですよ。
理想的な家族でしょう?』
頭が下がります!