生産者レポートRene Mure・Thomas Mure氏となります。
Thomas氏からはかなり多くの話が伺えたので2回に分けてご案内させていただきます。
Rene Mure
12代目 Thomas Mure氏(栽培・醸造担当)
アルザスの最南端、ローファ地区に居を構えるルネ・ミューレは12代続く
生産者です。彼のワインの特徴のひとつとして集中力を感じさせる果実味が
挙げられるでしょう。
この理由として、アルザスとして異例な密植度の高さと冷涼なアルザスにお
いて類まれな日照に恵まれたクロ・サン・ランドランの優位性が考えられる
と思い、彼に尋ねてみた。
『私たちは1ヘクタールあたり約10,000本という植密度で葡萄を植え
ています。確かに、現在のアルザスでは1ヘクタールあたり4,000本程
度の植密度が一般的です。しかし、150年前のアルザスではどの畑も私たち
のような植密度の高さだったのです。
植密度が下がった一番の大きな理由は大戦後のことだと思います。株を均等に
植えてコントロールするキャノピーマネージメントの浸透、それによりトラク
ターでの土壌の耕作が主流となりました。トラクターを畑に入れるには植密度
を下げなくてはなりません。』
『現在、私たちのクロ・サン・ランドランの畑は畝と畝の幅が約1.3メートル。
そして80センチ間隔で葡萄樹が植えられています。植密度があがれば表土で
は葡萄樹同士の生存競争が起こり、葡萄は深く深く根を下ろします。
クロ・サン・ランドランの畑は日照が強く、非常に石灰質が強い土壌です。
葡萄が根を深く張ることによって、地上での日照が強くても水分不足になること
はなく、葡萄が健全に成熟してくれるのです。真の意味でのテロワールを表現す
ることが出来るのです。』
彼の言葉には繰り返し繰り返し『Maturite(果実の成熟)』と『Racine(樹の根)』
が登場します。多産型のアルザス品種において、クロ・サン・ランドランの個性を
表すための手段なのでしょう。
特級畑ですら1ヘクタールあたり最大70ヘクトリットルまで収穫が認められてい
るこの地で、彼らは収穫量を平均25~45ヘクトリットルと極端に低く抑えてい
ます。
『私たちはこの10年間、ビオディナミ栽培を選択しています。
これも健全な土壌を造り、葡萄樹の根を地中深く下ろすためです。
そして収穫量を低く抑えることで葡萄は健全に成熟し、テロワールの個性を
反映してくれるのです。』
幕張でのフーデックス期間、そして生産者主催合同試飲会で
彼らのワインを試飲しながら各々のワインについて説明してもらいました。
NV Cremant d’Alsace Cuvee Prestige
2007 Cremant d’Alsace Millesimes
彼らのクレマン・ダルザスはシャンパーニュとも異なる個性があり、果実味とミネラル
のバランスをアルザスらしい酸味が支えています。
単独年で仕込むミレジメは、2006年まではクロ・サン・ランドランに植えられた
シャルドネ種100%で造られていました。
しかし2007年からはシャルドネとリースリングを50%ずつのブレンドに変更
したとのことです。
『なぜリースリングを混ぜたのかについては理由があります。
まず、クロ・サン・ランドランの個性をよりはっきりと表現するためにはシャルドネ100%では
少し重たすぎると考えたからです。
2007年は私たちが知っている限りで本当に最良の年となりました。十分な日照に
恵まれたおかげで、この年のシャルドネの潜在アルコール度数は13.5度にまで達
しました。
しかしその背景には地球温暖化の影響があると私たちは考えているので手放しで喜ぶ
わけにはいかないかもしれません。
30年前と比較して、葡萄の開花、収穫は約2週間ほど早くなっています。』
彼の言うとおり、クレマン・ダルザス ミレジメ2007は従来の体躯のしっかり
としたシャルドネの重厚さに、冷涼さを感じさせるリースリングのアロマとミネラル
感が加わっており、クレマン・プレステージの延長線上に位置する味わいに感じられ
ました。
2007 Riesling Cote de Rouffach
2007 Gewurztraminer Cote de Rouffach
2008 Riesling Cote de Rouffach
2008 Pinot Gris Cote de Rouffach
2008 Gewurztraminer Signature
彼らのワインは、これまではいわゆるネゴシアン物となるコート・ド・ローファと
ドメーヌ物となるクロ・サン・ランドランを中心としたワインのふたつに大別出来
ました。しかし、2008年、INAOのアペラシオン制度の強化を受けて、彼らのピノ
・ノワール コート・ド・ローファの区画の一部が“コート・ド・ローファ”を名乗
れなくなってしまいました。そこで彼らは、従来のネゴシアン物であるコート・ド・
ローファを“Signature(シニャチュール)”という新たなラインとしてリリースする
ことになりました。
ネゴシアン物?と侮るなかれ。
近年、目覚ましく向上を続けたコート・ド・ローファのワインは
“Signature(署名)”の名前の通り、ルネ・ミューレのお墨付きワインとして旨
を張ってご案内できます。
つづく・・・